2026年6月、オペラの旅、続きます。
さまよえる日本人の私は、ウィーンをあとにして、ついにオペラの生誕地、イタリアへ。
ボローニャ(コミュナーレ劇場は改装中)、ラヴェンナ(フェスティバル中だったけど日程が合わず、Muti観れず😢)、ローマを経て、ナポリへやってきました。
実は、もともとナポリまで行く予定はなかったんです。
ところがローマオペラのプログラムを見たら、『椿姫』のトリプルキャスト&チケットがバカ高い。
うーん……。
それなら、と勢いでナポリのサンカルロ劇場を調べてみたら――
大当たり。
なんと、大大ファンのソンドラ・ラドヴァノフスキーと、今注目している若手テノール、フレディ・デ・トマーゾのコンサートがあるではないか!
しかもその前日は、アレクサンドラ・クルジャク主演の『アドリアナ・ルクルヴルール』。
これは行くしかない。
ナポリは過去2回訪れていて、正直、あまりのカオスに「もういいかな……」と思っていた街。
でも、ソンドラのためなら、、、、(笑)
息子、そして日本から合流した姉も引き連れ、列車でナポリへ参入しました。
やっぱりナポリは、ナポリだった
ナポリ中央駅に着いた途端、カオス。
白タク、なぜかタクシーの列を仕切っている人、そして運転手はふっかける。
「あー、出た出た。嘘つき村に来たねー」
と言いながら、なんとかB&Bに到着。
すぐに身支度をして、サンカルロ劇場へ向かいます。
今回の旅行では、基本的にオペラハウスまで歩ける場所に宿を取りました。ナポリでは、部屋の広さと夜道のことも考えて、劇場から徒歩7分ほどのChiaiaエリアへ。
スパニッシュ・クォーターにも近く、オペラ後の食事にも困りません。
ナポリは本当にタクシーと運転手の当たりハズレが大きいので、劇場へ歩いて行ける場所はおすすめです。夜の公共交通機関も、あまりあてになりません(笑)。
でも。
そんなナポリのカオスを乗り越えてでも行きたいのが、サンカルロ劇場 Teatro di San Carlo。
ヨーロッパで現役最古のオペラハウス。ロッシーニもここでこき使われ(笑)、ヴェルディも「ナポリで成功せねば!」と作品を書いた、18〜19世紀のオペラの中心地です。
嘘つき村のタクシーにも負けませぬ(笑)。
ところが、ソンドラがドタキャン!

そして今回、一番楽しみにしていたソンドラ。
キャンセル。
えーーーーー😢
しかも普通の体調不良ではありません。
サンカルロ劇場の前総支配人らをめぐる資金不正流用疑惑の捜査で、報道にソンドラやヨーナス・カウフマンの名前まで登場。
ソンドラはSNSで「不正への関与は事実無根」と強く否定・抗議し、その結果、今回の出演をキャンセルしたのでした。
ソンドラを観るためにナポリまで来たのに……。
ところが。
その代役として、前夜まで『アドリアナ・ルクルヴルール』のタイトルロールを歌っていた**Aleksandra Kurzak(アレクサンドラ・クルジャク)**が、フレディとのコンサートに出演することになりました。
そして、これが予想外によかった。
アレクサンドラ・クルジャク、再発見


もともと上手い人なのはわかっていました。
でも今回、改めて、
この人、本当に上手い。
声が以前よりかなりダークになっていて、『トスカ』の「歌に生き、愛に生き」などの選曲にもよく合う。
そして何より、テクニックがすっごくしっかりしている。
最近は、声の美しさやvolumeに頼って、なんでもガンガン歌うシンガーも多いので、こういう人を聴くと、
「ああ、本当に上手い人って、こういうことだよね」
と、ほれぼれします。
胸声から頭声への切り替えも自然だし、表現力も素晴らしい。
夫のロベルト・アラーニャほどのカリスマはないけれど――まあ、あの人は異常なので(笑)――小柄ながら華やか。
イタリア語も堪能で、観客にも愛されていて、舞台上でもリラックスしてマイペース。
すごくよかったです。
そして、その対照が……
頑張れフレディ



フレディ・デ・トマーゾ。
イタリア系イギリス人の若手テノールで、声が大きく、ロブストで、ちょっと昔のイタリア人テノールっぽい。
私は結構好きなんです。
が。
体は筋肉マンで大きいのに、なんだかすっごく緊張している。
観ているこちらまで緊張(笑)。
声そのものは、とてもいい。
特に『トスカ』のカヴァラドッシのような劇的な場面では、楽々と出る高音と輝かしい胸声がとても魅力的。
だから惹かれたんだけど……
今回のコンサートでは、アレクサンドラに完全に食われました。
残念ながら、力任せに歌う感じと、一本調子な感じがまだ強い。
『マクベス』のマクダフのアリアも歌ったので、秋にMet Operaで同役を歌うこともあり、すごく期待していたのですが……
悪くはない。
悪くはないんだけど。
なんだろう。
ニュアンスと表現の起伏がもう少し欲しい。
でも、でも。
やっぱり彼の声は好きだし、いかにもー、という感じのカンタービレも好き。
まだ若いし、未来は明るい(はず)。
これからもっとテクニックや「声で演技する」技術を身につけてくれることを期待して、
頑張れ、フレディ。
好青年だしねー💛
前夜の『アドリアナ・ルクルブール』



でも、こうなると、最近活躍しているスピント&ドラマティックテノールで、本当に素晴らしい!と思うシンガーがいないのが悲しすぎる。
実は、このコンサートの前夜にもクルジャクを観ていました。
『アドリアナ・ルクルヴルール』です。
タイトルロールがクルジャク、マウリツィオがBrian Jagde、ブイヨン公妃がElīna Garanča。
豪華キャスト!
……のはずなんですが。
アメリカ人テノールのBrian Jagde。
かっこいい。声量もある。すべての音も出る。
でも、
ワンパターンで、つまらない。
ニュアンスがないんです。
『アイーダ』のラダメスのようなヒーロー的な役なら、それでもかなり映えると思う。ヒーロー、一途、一直線。
でも『アドリアナ』のマウリツィオは、勇ましいだけではダメ。
貴族で、プレイボーイで、賢そうで、ちょっとお金持ちのチャラ男っぽい余裕も必要(笑)。
ベルカント的なテクニックやリリカルな表現も求められるので(これで甘いチャラ男表現)、Jagdeにはあまり合っていない、というか、リリカルさがない。
もともと二人の女性の間を行ったり来たりする、いけ好かない男なのに、歌唱がイマイチでさらに印象悪くなっちゃった(笑)。
やっぱり、役選びは大事ですねー。
一方、アドリアナのクルジャク。
「ヴェリズモには少し声がリリックすぎるかな?」
という私の予想を、完全に覆しました。
低音がものすごく充実していて、隣で聴いていた姉が、
「この人、メゾ?」
と言ったほど。
ちょっと大げさなところはあったけれど、本当に上手い。
すべての音が確実で、ニュアンスも声色も考え抜かれている。でも、機械的ではない。
とにかく、
上手い!
ただし。
ソンドラやアンナ・ネトレプコを聴いたときに感じる、理由をうまく説明できない、胸をぎゅっと締め付けられるような感情。
それが今回のクルジャクには、私はあまり感じなかった。
そこだけは少し残念。
でも、やっぱり彼女はすごい。
もっと観たくなりました。
そして期待していたガランチャ様...
もう一人、楽しみにしていたのがElīna Garanča。
ところが。
なんだか、スッと終わってしまった……。
暗闇の中、お互いが誰かわからないまま恋のライバル同士が腹を探り合うアドリアナとブイヨン公妃の場面は、さすがに見応えがありました。
でも、ガランチャの声の輝きがいまひとつ。
あんなに綺麗なのに、なんだか地味。
声の響きにも少し無理を感じて、とても残念。ブイヨン公妃の役は、良く歌ってるようなので、今回は調子がイマイチだったのか??それとも、、、、
最近はオペラハウスでも以前ほど歌っていない印象。レパートリーも少し狭まってきているように感じます。ーまあこれは、年齢と共に、〝役の卒業”があって、彼女はロッシーニや、モーツァルト、シュトラウスのズボン役(男性役)はもう歌わないし。
コロナの頃から少し重めの役に挑戦し始めたガランチャ様。
今シーズンのメトロポリタンオペラの『パルジファル』で、クンドリーを歌います。
この役では、バイロイトでも大成功(2023年&2025年)だったそうなので、こちらに期待したいです。
ナポリ、サンカルロ劇場のカフェは楽しい。
さて。
歌手の話ばかりになりましたが、サンカルロ劇場で私がかなり気に入ったのが、
カフェ。
2公演ともオーケストラ席だったので、地下のメインカフェへ行きました。
もちろんコーヒーは美味しい。
小腹が空けばアランチーノや、モッツァレラ・イン・カロッツァなどの揚げ物もある。
お酒も当然あり、アペロール・スプリッツも美味しい。
私はお酒を飲むとオペラ中に寝ちゃうので、観劇前はカフェイン注入のみですが(笑)。
姉がアペロールを頼んだら、ちょっとしたお菓子までついてきました。
その中のパリパリしたお菓子が美味しかったので、翌日はフルサイズのスフォリアテッラを注文。
パリパリの生地の中にリコッタ。
すごくおいしかった。。。。。
ああ。
やっぱりMet Operaのカフェ、もっと頑張ってほしい……😢
ちなみに、カフェでの注文方法。
まずバーカウンター両端のレジで欲しいものを注文して、お会計。
レシートを持って、バールのお兄さんに見せます。
レジまではちゃんと一列なので心配ありません。
問題は、そこから(笑)。
バーのお兄さんとうまく目を合わせる。
「Scusi!」と声をかける。
そして、
「私、さっきからここにいました!」感をドーンと出す。
じゃないと、負けます(笑)。
ナポリへようこそ(笑)



やっぱり、サンカルロ劇場は行く価値あり
個人的には、演目、歌手のクオリティ、そしてチケットのお値段まで考えると、サンカルロ劇場はとても素晴らしいオペラハウスだと思います。
もちろん、オーケストラだけを比べれば、ウィーン、ベルリン、ミュンヘンには及ばない。
でも、サンカルロのオーケストラには、
本場のイタリアン・パッションと歌心がある。
血沸き肉躍る感じ、とでも言いましょうか。
オペラって、そもそも娯楽なんですよね。
あれこれ難しく考えず、美しい劇場に入って、歌を聴いて、幕間に美味しいコーヒーを飲んで、時には歌手に文句を言って(笑)、楽しむ。
ナポリに行く機会があったら、ぜひサンカルロ劇場にも行ってみてください。
ナポリのカオスに多少やられても(笑)、行く価値はあります。
Metropolitan Opera 2026-2027シーズン 予告会
前出のフレディ・デ・トマーゾや、アレクサンドラ・クルジャク、エレーナ・ガランチャをご覧になりたい方。そしても勿論、ソンドラ・ラドヴァノフスキーDivaも。皆新シーズンのMetに出ます!
メトロポリタンオペラ新シーズン(2026-2027)の予告会を今月ZOOMで開催します。
Metで何を観るか迷っている方、メットでオペラ体験したい方、NYにいらっしゃる方、是非ご参加ください。
Met Opera 予告会の日程・受付開始

夜クラス:8月25日(火)8pm(est)~
日中クラス:9月1日 (火)10AM(est)~
予告会とは?
何を観るか迷う前に──シーズン前に“必見オペラ”をまとめてご紹介するクラスです。
参加後、シーズンの全体像が一目でわかり、時間も予算も無駄なく観劇計画が立てられます。日本からの友人や、家族とオペラを観たい、などの予定も立てやすくなります。
全ての作品をザっと見て、特に必見作品と必見キャストを紹介しつつ、そのプロダクションによってのベストシートなどもご紹介します。観る側から、何が初心者向け?ティーン向け?デート?子供もOK?などなども分けていこうかなーと思います。
予告会は、オペラシーズンの“虎の巻”
- この秋・冬、何を観るべきかが一目でわかる
- チケット争奪戦必至の必聴シンガーを先取り
- 初心者も通も楽しめるおすすめ演目を厳選
- 限られた時間と予算で最も充実した観劇プランを立てられる
日程:
夜クラス8PM est 8月25(火)
日中クラス 10am est 9/1(火)
上記の日程でご都合が悪い方は、ご希望の日程・時間をご相談ください。勿論録音でのご参加も可能です。
所要時間:約2時間
参加費:Ealy bird $49(8/13迄) ー Regular $59
含まれるもの:
- 2時間のライブ予告講座
- オリジナル解説資料
- オペラ鑑賞に役立つボキャブラリーリスト
- 録画アーカイブ付き(期間限定視聴)
お申込み方法:下記リンクから、ご希望の日程、お名前、メルアド、と共に、お申し込みください。
お支払い方法をご連絡いたします。
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