
9月から開幕する米国のオペラシーズン。普段は、10月前半には遅くともシーズン初オペラ観劇をするのですが、今年は息子が高校のシニアということもあり、前半は時間に全く余裕がありませんでした。
でも大晦日ガラにプレミアを飾るベッリーニの清教徒は、なにがなんでも行かなきゃ!と今シーズンのイチオシとオペラクラスの皆さんに大宣言して、年明け観てきました。
今回は、新演出ということもあり、1月15日(木)と千秋楽の1月18日(日)2回観劇。
予習クラスの受講生の皆さんと観劇した千秋楽は、やはり、盛り上がった!
けれど、、、、
15日に一人で天井桟敷のお席で見たときに、あまりにも滑稽な演出を目の当たりにして、これはブログに書き留めなきゃ―と思った次第です。
突っ込みどころ有り過ぎ~

清教徒のあらすじ:
17世紀イングランド内戦下、清教徒の娘エルヴィーラは王党派の騎士アルトゥーロとの結婚を許されるが、婚礼当日、彼が囚われの女性(実は故チャールズ1世の妃でエンリエッタ女王)を救って逃亡したため、捨てられたと思い心を壊す。やがて真実が明らかになり、政治的赦免のもとで二人は再会し結ばれる。
清教徒はベッリーニの遺作で、狂乱のシーンがあるソプラノのテクニックは勿論、レガート+超音を要求されるテノールのアリアなど、とにかく超一流のベルカントシンガーをキャストにそろえなければ、成り立たない、ベルカント作品の中でも、難易度が非常に高いオペラです。
さて、パフォーマンスの方は、シンガーは主役のLissete Oropesaを筆頭に、現在のベルカント歌いのトップチわれているメンバーが奮闘し、NYタイムズを始め、各紙では、素晴らしい評判でした。
でも、プロの批評家、一ファンみんな口をそろえるのが、演出の酷さ。
今回の『清教徒』は、英国のセットデザイナー、Charles Edwards氏の演出家デビュー。
彼は、数々のオペラのセットデザインのキャリアがあり、オペラには詳しいはず。
が、演出家となると、ちょち狂ったみたい(;’∀’)
発想が謎の演出
Edward氏はインタビューで「清教徒は英国史上で、唯一の国家革命(王政廃止)であり、現在の英国の政治体制の基盤になった大切な出来事、ってこともあって、史実に忠実に描きたい、、、、。」と話していました。
たしかに、セットや衣装は忠実。
その時代の宮廷画家(ヴァンダイク)による肖像画からヒントを得た王党派の衣装など、清教徒の黒いドレスなどと対比されてわかりやすい。
でも分かり易いのはそこまで。
演技指導と、解釈がまったくわからない、、、どころか、しっかり予習をした私のクラスの受講者の皆さんも、既にこのオペラを知ってる観客もみんな混乱してた。
本来は本作品の時代設定は、チャールズ1世が死刑された後。
けれど今回の演出は、前奏曲&1幕目1場は、未だチャールズ1世は生きていて、彼の死刑の8年前に設定。なので、内乱が本格的になる前に設定されていました。
前奏曲中に幕前で今回の演出用に創作された”エピローグ”をご披露:エルヴィーラとアルトゥーロが子供時代に出会って、恋落ちて(というか、エルヴィーラが一目惚れ?迫って恋仲?)でも派閥が違うから別れさせられて、独りぼっちになったアルトゥーロは、歳がぐーんと上の清教徒のリカルッド(BR)にガン飛ばされ、なぜかパパらしき人が出てきて大泣き。幕が開くと、別れさせられたエルヴィーラが、おやじリッカルドと無理矢理に婚約させられる。でも彼女は絶対嫌!というのが今回のエピローグ。
そして2場はその8年後の設定で、1場から2場の間に8年の時が流れ、革命ー王党派と清教徒派の戦争が始まり、王は死刑。
そして2場が始まって初めて実際のオペラのあらすじの「エルヴィーラと結婚するつもりだったリカルドが、戦いからプリマスに戻ったら、(エルヴィーラの叔父のジョルジオの説得で)、エルヴィーラの父親に、彼女はアルトゥーロと結婚すると知らされて傷心する」、というシーンが歌われる。
これって、8年の婚約期間があったの?戦争があったから長く待ったのか、彼女が幼い設定として長く待ったのか???なんか余分なストーリーを字幕やセリフ無しの役者さんを使って示唆してる。
でも余計わかんない(笑)
なので、前奏曲の途中で子供時代を演じるminiエルヴェーラとminiアルトゥーロが出てきた時は誰?とみんな思っちゃって。しかもエルヴィーラ役の役者さんは、どこをどう見ても、アルトゥーロの役の男の子よりお姉さん。で彼女が彼を先に好きになってせまってる感じ(;’∀’) 違和感。
違和感・混乱リスト
全てのシーンは、清教徒の教会の内起こる設定。そして、エルヴィーラが画家(趣味?)の設定。
- 1幕目1場で、教会に飾ってある英国王室のエンブレムに、反王党派=清教徒のおっちゃんたちが、唾かけたり、おまけに放尿。
- そのエンブレムをまた、別の人が触ったり、キスしたり(王党派)。汚い…よね??(-_-;)
- 少し元々情緒不安定であろうエルヴィーラが、幻想を見ちゃう場面が多々。幻想の主は、miniアルトゥーロの出演。おまけにそのMiniアルトゥーロがエンリエッタ女王と一緒だから(女王はミニじゃなくて、そのまんまの中年女性)、余計混乱?
- ジョルジオ叔父さんとエルヴィーラの2人のシーン(1幕3場)に絶賛囚われ中のエンリエッタ(エルヴィーラは彼女が女王と知らない)が、楽しそうに出現。エルヴィーラと仲良しっぽくて、モデルになったり、花嫁衣裳持って来たりとかいがいしい。一瞬乳母かと思った。
- 1幕目のフィナーレ。アルトゥーロに捨てられた(彼は他の女性を選んだ)ショックで、気が狂い始めるエルヴィーラ。でも狂い過ぎて、今まで抑圧されてからか、いきなりホルモンが爆発したように、ヤケ酒リッカルドを押し倒して彼のシャツを脱がせて抱擁+@し始めちゃった⁉….かっとび過ぎ!
他にも色々あるんだけど、フィナーレが一番????でした。
本来なら、王党派が負け、罷免で許されたアルトゥーロをめでたく結ばれるハッピーエンドのはずなのに、王党派負け、クロムウェル率いる清教徒勝利&清教徒のコーラスとなったら、アルトゥーロったら、悔しさと屈辱で、最愛のエルヴィーラを押しのけて、舞台後方に逃げ出しちゃう(;’∀’)
実は私が天井桟敷席で観たときは、舞台の上の方が見えなくて、彼、逃げた???で終わったんだけど、千秋楽でのお席‐正面からみたら、舞台後方の階段上にある説教壇(pulpit)で、アルトゥーロの亡き父(王党派なのでカラフルなシルクを纏って)が彼を待っていて、二人で最後に抱き合う、、、、でおしまい。
いつの間に説教壇が天国になったのか?またまた混乱。
まあ、他にも????って箇所が細々有り過ぎて、気が散っちゃうのがホント残念。
Belliniの音楽って、なめらかで、鼻歌歌えそうなメロディアスでレガートが多いから、簡単?って思われがちなんだけど、実はすごく難しくて。このレガートラインを保つのが、シンガーの実力が良くわかる。ベルカントって、実はプッチーニよりもずっと難しい。。。。誤魔化しがきかなくて。だからこそ、観客としては、集中して聴きたいのに、なんか幻想のが働いたり、のたれ死にしたりと、雑音ならぬ雑動?-目障りな動きが多すぎ&混乱いっぱい。
確実にわかったことは、現在のFootball Hooliganフットボール・フーリガンは、清教徒の酔っぱらいから来たんだわー、演出家によると(笑)。
日本でのライブビューイングは、3月末ですね。
ライブビューイングだとカメラワークで、煩わしい動きが写されないかもしれない(笑)
シンガー

今回のシンガーの感想は、ほんと難しい。演出の邪魔が入り過ぎってのもあるんだけど。
あくまでも私の感じた事を書きます。
エルヴィーラ(ソプラノ)
主役のLissete Oropesaは、努力の人だと思う。彼女のテクニックは素晴らしいし、表情も良いし、やっぱり上手いなーと思う。
狂乱の場も本当に素晴らしかったです。
でも、なんだろう、、、、声がちょっと硬いというか、、、、、持って生まれた声の柔軟性はないのかな?でもそれを乗り越えちゃうテクニックがあるから素晴らしいんだけど。
別に透き通るような声を求めてるわけじゃなく。テクニックはすごいし、でもうーん。サザランドとカラスとグルベローヴァを聴きすぎたからかしら(笑)
正直、私はLisetteのフランスものの方が好きかなー。マノンでMetの主役デビューをしたとき、本当に素晴らしいと思った。春にまた椿姫を歌うけど、来年はフランスオペラを聴きたいです。ユグノー教徒とか。
アルトゥーロ
私、この役が歌う曲が大好き。多分全テノールのアリアの中で好きな上位に入る曲。3幕目の「Corre a valle, corre a monte 」はあまりにも美しく、勿論「Credeasi, misera」は息を飲んで聴いちゃう。なので、Expextationがいっぱいなんだけど….しかし….
アルトゥーロ役のLawrence Brownlee。いや、高音が出るのはわかるんだけど、でもその前提で、ベルカントを勇ましく歌い過ぎ。すべてフォルテ?って感じで。高音を求めず、ハビエや、Juan Diego Florezが歌った方が、演目の美しさが堪能できるんじゃ??と思うけど、みんなやっぱり最後の高音Fが聴きたいんでしょね、、、、、
見た目も残念。しかも王党派は、パステル系のきれいなシルクタフタでできたような上下に、レースのお襟。いや、、、、似合わない(-_-;)。ローレンス、すごい太っちゃって….まあこればかりは仕方ないのかなー。でもパバロッティがドーンと出てきて、アルトゥーロ役歌ったら、納得しちゃうから、やぱり声と音楽性がイマイチなんだと思う。


バリトンとバス
リッカルド役のバリトン、Artur Rucunskiは、本当によく声がでて、文字通り本当に息が長い。呼吸いつしてるの???って思っちゃう。リッカルドのアリアで、やったら最後の音を伸ばして、拍手喝采で、観客を沸かせてたけど、それを喜ぶ人と、えげつないと思う人をいるみたい。私は、うーん、、、、必要性が見えなかったけど、観客の大喝采に思わず笑顔が少し出ちゃったアルトゥーが可愛かった(笑)。実は彼、ライブビューイングの録音の日、体調崩してキャンセルだったんですよね。
私が観た2回は復帰した後の公演。だから力も入ってたんでしょう。
でもアルトゥーは数少ないベルカントを歌えるバリトンだしー2022年の『ランメルモールのルチア』の時の悪者兄ちゃんも良かったーまだこれから役の幅を広げつつ、声にも深みが増せが良いなーと期待してます。特に自分はVerdi得意って言ってるから余計期待!
さて、最後にジョルジオ叔父さん役(バス)のChristian Van Horn。
いや、悪くはないんだけど、過去に聴いた人が好過ぎて(笑)、、、、あんまりインパクトなかったです。いや、とっても良いんです。ただ、インパクトがね。これも好みの問題かも。今月ダラスで、Verdiの『Don Carlo』のフィリップ1世を歌うんだけど、、、、これも過去に聴いたバスが良すぎるから、どうかなー。
でも演技はみんなとっても上手でした。特にこのお二人(バリトン、バス)の酔っぱらいぶりは(笑)
全体的に、混乱演出を除けば、とてもよかった。多分(インタビュー時に指揮者も言ってたけど)、現在のシンガーの中では、このメンバーはほぼ最高メンバーなんだと思います。特にリセット。やっぱり彼女は好きなので、また聴きに行きます(笑)。

私の次のオペラは、ダラスオペラの『Don Carlo』。キャストが、素晴らしいので大期待です。ただ、ダラスオペラのオーケストラがいつも残念なので、良くなってることを祈っています。なんか前代未聞の高額助成金もらったみたいだし(笑)。
そして次は3月NYに戻って、メットで期待・話題のワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』。
これも新演出なので、すごく心配(笑)だけどとっても楽しみです。
こちらは予習クラスを2月の後半に開催します。ご興味のある方はご連絡くださいね!

